夏休みの自由研究 クモが網を張るところを観察
クモ(スパイダー)が網を張っているところを見たことがありますか?
網を張る手順を観察してまとめるのもおもしろい自由研究だと思います。夕方から夜にかけての観察です。
一種類のクモだけの観察なら、低学年からできる自由研究ですが、興味をもっていろいろ手を広げ始めたら、高学年にも手に負えない研究です。
この後、クモの網がいろいろ登場します。
↑ 霧で水滴がついたクモの網。
クモの観察方法はいろいろありますが…
クモの観察方法は、ちょっと考えただけでもいろいろ浮かびます。
夏休みに限定した観察と考えると、間に合わないようなものもありますが…。
*クモのオスとメスの形、張る網の形
*場所による分布(どこに、なにが、何頭いたか)
*特定の個体の成長記録
*捕食の仕方(獲物を与えて捕まえ方を見る)
*網を張る手順
*網を標本として採集
*クモの卵のう(探したり、飼育して産卵させる)
*クモの交接(結婚のこと)
網を張るクモと張らないクモ
クモの中にも網を張るクモ(造網性)と張らないクモ(徘徊性)がいます。
造網性のクモも、ずっと張りっぱなしで手直しするクモや、毎日、夜張って朝撤収するクモ、張る時間帯が天候によって違うクモなど、いろいろ。
よく「クモの巣」と言いますが、網を巣として真ん中に鎮座しているクモと、ふだんは網にはいないで、獲物が掛かった時だけ網の上に姿を見せるクモ(巣は別にあるクモ)にも分けられます。
網の形も、クモによってさまざまです。ご近所のクモならば、慣れてくれば、網の形を見ただけで、クモご本人を見なくても種類がだいたいわかります。
↓ クモの網に着目した図鑑です。子ども向けなのでふりがながつけてあります。
クモの網の張り方を観察
網張りを観察するのはオニグモ類がわかりやすい
クモが本当に好きな子は「おすすめ」なんて気にせずに、自分でどんどん観察すればいい思います。
ちょっと楽をしたい人は、観察しやすいクモから始めると興味を持ちやすいかもしれません。
オニグモの仲間は「正常円網」と言われる、一般のクモのイラストに描かれるような形の網を張ります。夕方張って朝撤収するものを観察するのがおすすめ。日没ごろに網を張り始めるものが多いです。
糸で枠を作って縦糸を張った後、粗い目の横糸(足場糸)を張ります。細かい目の横糸をグルグルと張りながら、足場糸は回収していきます。糸はお尻の糸いぼから出されます。どういう手順で進むのかを観察します。
↑ 夕方、雑木林沿いでサツマノミダマシが網を張っているところ。
↑ 夕方、池のほとりでナカムラオニグモが網を張るところ。
↑ 朝6時、雑木林でギンメッキゴミグモが網を張るところ。ほかのギンメッキゴミグモは夜中のうちに張り終わっていましたが、この個体は明るくなってから張っていました。
見つけやすい場所
川や池の横の手すり
水辺の手すりは、足場もいいことが多く、やぶ蚊に刺されることも少ないので、観察しやすくおすすめです。1カ所にいる個体数も多いように思います。多少都会でも、オニグモの仲間がたくさん見つかります。
雑木林沿いの道
雑木林沿いの道も、クモたちが夕方になるとたくさん網を張り始めるのを見かけます。ただ、草や木がごちゃごちゃして観察しにくいのと、やぶ蚊の攻撃が難点です。
家や店などの軒下
イエオニグモのように、一般民家や店舗の軒下で網を張るクモもいます。もしもご近所の建物でイエオニグモが見つかれば、手軽に観察できてラッキーです。
観察方法
夕方、日没前後に下見に回って網を張っているクモを見つけておく。
翌日、早めに行って観察を始める。日中はクモは物陰に隠れていて、夕方網を張り始めます。枠糸を張り始めるところから見られると思います。
(クモによっては真夜中や明け方に張る種類もいます)
記録方法
デジカメで順次撮影しながら、イラストも描きつつ記録していくのがおすすめです。
ただ、てきぱきと網を張るクモたちは動きが早く、夕方の薄暗がりの中でピントの合った写真を撮るのは少々難しいかもしれません。
できれば、ビデオで最初から最後まで撮影して、後で何倍速かに編集すると、わかりやすい映像が残ります。
↑ 川のつり橋で見たイエオニグモの網。すでに完成し、獲物がかかって乱れています。
デジカメの設定
マクロ(チュウリップマークが多い)に設定し、フラッシュを使う。
逆光で構えて、少しフラッシュが強すぎるぐらいの方が、網が鮮明に写ります。
網を張る最中はクモがよく動くので、ピント合わせが大変です。網の中央部分に置きピンをして撮るとピンボケが減ります。
おまけの観察1
出来上がった網を触ってみると、横糸はベタベタですが、縦糸は手にくっつきません。よく見ると、横糸には粘球がついていて、縦糸にはついていません。
このベタベタ成分が獲物をくっつける働きをしています。
↑ ビジョオニグモの金色の網。よく見ると、横糸が金色で、黄色い粘球がついています。
おまけの観察2
毎日網を張りなおさないクモたちも、こまめにリフォームしています。
リフォームするクモで一番身近なのがジョロウグモ。
私が観察したところ、毎晩半分ずつ張り替えるようです。今日右半分を張り替えたら、明日は左半分…という感じ。雨がたくさん降る前にも網をたたんでいました。
ジョロウグモは個体数も多いので、毎晩見に行くと張り替えの様子や張り替えの理由(大雨や大風)などがわかっておもしろいです。
ただ、ジョロウグモの網の張り替えは夜遅めの時間(8~11時くらい)なので、子どもの観察には不適かも。
夜の張り替えが見られなくても、昼間に網の一部をわざと壊してみて、どんなふうにリフォームするの見ていると、なかなか感動します。あんまり大きく壊し過ぎると、クモがダメージを受けて作り直しする力がなくなってしまうかも。
ジョロウグモは、上に挙げたクモたちと違って、上の方には横糸のない五線譜のような網を張ります。枠糸や足場糸を張るところから観察していると、どうして五線譜になるのかもわかりますよ。
参考になる本
↓ 身近なクモはほとんど載っています。ソフトカバーなので持ち歩きにも便利。
↓ クモの網の構造や獲物が掛かる仕組み、網を張る手順など、網に関することがクモの種類ごとにていねいに説明されています。
網を張るクモの観察のすばらしい手引書です。白黒で大人向けですが、内容を限定すれば小学校高学年でも理解できると思います。
この本は一時絶版になって、私は著者ご本人から購入しましたが、入手が難しい場合は東京蜘蛛談話会のサイトからも購入可能だそうです。
目次はこちら。(内容へのリンクが切れていますが)→ http://spider.art.coocan.jp/asjapan/spiderwebikeda.htm
東京蜘蛛談話会のサイトはこちら。→ Tokyo Spider Study Group / 東京蜘蛛談話会
↓ クモの全般的な知識がわかりやすくコンパクトにまとめられています。
おどろきのクモの世界―網をはる花にひそむ空をとぶ (子供の科学サイエンスブックス)
- 作者: 新海栄一,新海明
- 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
- 発売日: 2009/05
- メディア: 大型本
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↓ クモの網を厚紙に貼りつけて標本に。クモ標本の第一人者の船曳さんの本です。
クモの網―What a Wonderful Web! (INAX BOOKLET)
- 作者: 船曳和代,新海明,住友和子編集室,村松寿満子,七字由布
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- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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↓ オニグモの一日を描いた美しい絵本です。
↓ 研究者向けの本なので、白黒で文字ばかりですが、現在のクモについての研究が各分野にわたって書かれているので、自由研究や観察をするときの参考になります。