つる材の特徴 リースやかご作りに
リースやかごを作っていると、「つるは山奥まで採りに行くの?」とよく言われます。
わが街は田舎なので、川原や池のほとり、荒れ果てた空き地など、ちょっと探せばつる植物は見つかります。(山奥ではありません)
リースやかごを作る時に使うつるは、植物によって性質が違います。
私が近所で調達しているつる材の特徴をまとめてみます。
今まで書いてきた内容と重複も多いですが、今回はつるの拡大写真を撮ってみました。
▲川原に茂るアオツヅラフジ(黄色)とオニドコロ(茶色)。
クズ
空き地や藪を覆うように生えているクズは、おそらく普通の人が一番よく見かけるつる植物では?
▼まだ緑色の若い茎や空中に浮いているように生えている茎は、すぐにパキパキ折れてしまうのでお勧めできません。
▼地面に這うようにまっすぐに伸びていて茶色いつるを探します。(地這いのつる)
よじ登れるものがあればすぐによじ登ってしまうので、開発して草木がなくなった状態で放置されているような空き地のクズがおすすめ。
▼採集当初は水分を含んでかなり重たいクズのつるですが、一週間も乾燥させればスカスカで軽くなります。フジのつると比べると、乱暴に扱うと折れてしまうようなもろさがあります。
強く力を加えたりしなければ、何年も長持ちします。
▼クズのつる、拡大すると…。光沢はありません。
▼作りたての状態はこちら。多少緑色でも太ければ使えます。
私は、かごを作る以外は、後の処理が楽なので採集した場所でリースにしてしまいます。帰宅してから細工をしようとすると、車の中も汚れるし、つるも絡んでやりにくいので。
▲地這いのクズの採集は、トゲやくっつき虫も少ないので連れて行ってもらえるワン。
アケビ
「つる材」と聞いて、人から私がよく言われるのがアケビのつる。
アケビのつるは里山に行けばたくさんありますが、私はあまり使いません。
▼たわわになったミツバアケビの実。
つるを採集するなら、このもう少し後の時期に。
▼このくらい落葉したころから採集。わが街は三つ葉のものがほとんどで五葉はほとんど見かけません。
▼アケビのつるは少し光沢があって、乾燥してもあまり変わりませんが、どうもしなやかさに欠ける気がするし、木に巻きついていた時の癖が強く残ります。
▼アケビのつる、拡大すると…。
民芸品などの美しいアケビかごは地這いのアケビつるを探して作るようですね。
私も地這いのアケビを探してみるのですが、なかなか見つかりません。今後の課題です。
フジ
雑木林などでわさわさ茂っているフジ。繁殖力が強すぎて邪魔になるせいか、よく下の部分だけカットされていることが多いです。
▼こういう茂みで地面から生えているつるを探します。
▼フジの新しい枝(写真中の細い枝)はまっすぐで味のないものが多く、ナチュラルクラフトにはあまり向かないように思います。きちんとした藤籠を作るにはいいのかも。
「庭のフジのつるをあげるよ」と言われたことがありましたが、毎年剪定されているフジはまっすぐな枝しかないので、私が作るようなクラフトには向きませんでした。残念。
▼フジは、マジックペンのように太いものは存在感のある大きなものに、鉛筆の太さのものはリースやかごに、いろいろな使い道があります。
太いものは硬くて簡単には形を作れないものもあり、形を整えてペットボトルが入った段ボールを重しにしてしばらく放置しておきます。
▼フジのつる、拡大すると…。
乾燥しても丈夫で、20年以上使いまわしているフジのリース台もあります。
アオツヅラフジ
私がクラフトをする上で一番好きなのがアオツヅラフジのつる。
細さが一定でしなやかで、乾燥しても長持ちします。
▼秋になると、黒い実で存在を思い出します。(おいしそうですが食べられません)
▼葉が黄色くなり、そろそろ採集適期。
▼こんな風にぐしゃぐしゃの状態でまだ細いアオツヅラフジも、束にしてまとめれば使いやすいリースになります。
▼アオツヅラフジはしなやかなので、大きくも小さくも作れます。
特に茶色くて縄跳びぐらいの細いくらいのものは、弾力があって、水につけたりしなくても自由自在に曲げられます。
▼アオツヅラフジのつる、拡大すると…。
フジに似ていますが、採集時にはフジよりもしなやかなので、混じっていても触ればすぐにわかります。
▼アオツヅラフジのまだ細くて青い茎の乾燥後。
ほかのつる植物は、まだ青い茎は乾燥すると折れてしまいますが、これは青くてもしなやか。
▼アオツヅラフジの青いつる、拡大すると…。2週間くらい干したもの。
▼上の青い茎のリースの作り立てはこんな感じ(写真中央)。青々としていました。
ちなみに写真左はクズ、下はヘクソカズラの採りたて。
▼アオツヅラフジのつるはしなやかなので、このかごの上部のぐるぐると巻いた部分のような細工ができるのが特徴。ほかのつるでこんなことをやると、パキパキと折れてしまいます。
※私はつる材を水につけて戻したりせず、採集してそのまま使います。採集してから乾燥させ、日数をかけて水につけて柔らかくする場合は、ほかのつるでも細かい作業ができるのかもしれません。
ツタ
ほかの木や塀に気根を伸ばして張りついて成長するツタ。
▼葉が紅葉して落ちるころからが採集適期。
▼気根や吸盤がついているのが、自然風で味がある、と私は思うのですが。
人によっては、気根や吸盤が汚らしいと感じる人もあるようで…。
▼ツタのつる、拡大すると…。
ヘクソカズラ
空き地や公共施設などのフェンスに絡みついているのをよく見かけます。
茎を折ったりちぎったりすると臭いにおいがするので、傷つけないようそっと採集。
▼フェンスに巻きつくヘクソカズラ。いちいち巻きついているので外すのが大変。
▼採集適期はこのくらいですが、ここまで待っていると実がスカスカになっていることも多いです。(←実を使う場合は)
▼ときどき、ヘクソカズラでもまっすぐなものがあって、実ではなくつるも使えます。
▼まっすぐなヘクソカズラをふんだんに使ってリースに。超軽量です。
こんなに乾燥した状態のつるでも、採集時は多少臭いがしました。干せば無臭。
▼ヘクソカズラのつる、拡大すると…。
▼道端でかごも編んでみましたが。
乾燥しても柔らかく、まったく強度のないかごになりました。
ツルウメモドキ
ツルウメモドキは、条件の適したところには大量に茂っているのですが。
実を飾りとして使うのはおすすめしますが、つる材はちょっと扱いが難しいです。
▼川原で繁茂するツルウメモドキ。野鳥たちに大人気。
▼ツルウメモドキで作ったリース。
元の枝から垂直に小枝が出ます。巻きついた癖も取れないので、形を生かした使い方になります。枝も硬いし、かご編みは難しいし、リースにするのも難しそう。
おしまいに
つるの採集に人を連れて行くと、みんな軍手をしたがります。
確かに、つるをひっぱると手が荒れるし、軍手の方が強く引くこともできます。つるの採集は、ちょっとした綱引きでもありますから…。
ただ、素手でじかに触ることでわかることは多いです。特に落葉してからの時期は、「場所と枝ぶり、触った感覚」でつるの種類がわかります。
▼私は、茂みの奥まで立ち入る時などは、指先だけ切った作業用手袋を使っています。 スマホで位置情報を確認しながら歩くことも多いので、そういう意味でも便利です。
▼つるの季節ごとの変化、ものに張りついて伸びる様子など、つるや草で編むことの第一人者が書かれた普通の植物図鑑とは一味違う図鑑です。