ダイビングで遭遇した危険な体験(4)ドリフトダイビングの恐怖
前回に引き続き、ダイビングの危険な思い出第四弾です。
今回は、海外でのドリフトダイビングで強い潮に流されたお話です。
ドリフトダイビングで吹っ飛ばされてパニックに
ドリフトダイビングとは
サンゴ礁の海で、浅瀬から深海にほぼ垂直に落ち込んでいる場所(ドロップオフ)は回遊魚が回ってきて、ダイビングの人気スポットです。いろんな魚が集まり、大型のサメが悠々と泳ぎまわり、迫力満点。
ただ、そういう所は流れが速いこともあって、その場にとどまってフィッシュウォッチングをするのではなく、潮の流れに乗ってダイビングを楽しむことが多いです。これがドリフトダイビング。
ドリフトダイビングは、危険性も高く、初心者にはお勧めできません。
現地人のガイド、外国人のバディ
モルディブのビヤドゥ島に行ったとき、大物に遭えるという上級者コースに一人で挑戦してみることにしました。
一緒に行った旦那はお昼寝。
行ってみると、日本人は私一人だけ。ブリーフィングも現地のガイドさんの癖のある英語で長々と説明されましたが、大枠だけわかったつもりになって船に乗り込みました。
バディに指定されたのはフランス人の背の高いおじさん。お子さんが10代後半ぐらいだったので、40代でしょうか?
こちらも、お子さんと奥さんは陸で休憩でした。
フランス語なんて、大学卒業以来使っていません。
コミュニケーションとれる? 大丈夫、私…?
後にも先にも、外国人がバディだったのは、私の経験ではこの時だけです。
サンゴ礁を楽しく進み…
大型のボートからエントリーして、流れの緩いサンゴ礁を、ウミガメや熱帯魚を見ながら、順調に進んでいきました。
美しい海中風景に癒されながら、問題のドロップオフに到着。
当初の予定では、ドロップオフの端にとどまって、上を行くサメたちを見るはずでした。確かに頭の上には、何匹もの大型のサメが悠々と旋回中。
パラオのブルーコーナーに潜ったことがあったので、サメが頭の上を泳ぐのは怖くはありませんでしたが…。
ちなみに、透明度は今一つで、バディとガイドさんは見えましたが、全員の姿は確認できない状況でした。
吹っ飛ばされた!
とにかく流れが速い!
サンゴの端をつかんでいても、サンゴがぽきぽき折れてしまいます。その場にじっとしていられない!
みんなはじっとしているのに、自分だけが飛ばされそうになって、かなり焦りました。
バディの顔を見ると、しっかりと私の方を見てくれていました。
「手を放して飛ばされてもいいか?」というジェスチャーに、「OK」と返してくれました。
でも、ものすごく流れが速くて怖すぎる!
ガイドさんは、サンゴにつかまったままでついて来ない。
バディのおじさんは、なんと、手をつないで一緒に飛ばされてくれました。
(普通、ダイビングでは手はつなぎません)
本当に、吹っ飛ばされる感じ。あっという間にみんなの姿も見えなくなりました。手をつないでいなければ、バラバラになっていたでしょう。
さらに、残圧ゼロ!
ダイビング中に焦って動揺すると、空気の消費がどんどん進みます。
残圧チェックをしたら、なんとほぼゼロでした。
バディにメーターを示すと、すかさず自分のオクトパス(予備の空気を吸う口)を差し出してくれました。
そのまま、どんどん飛ばされて…。
2人なので気持ちも落ち着いて、安全停止はできました。
おじさん、ありがとう…。
フロートがあってよかった
水面に上がると、船は当然そばには見当たらず、遠く彼方に見つかりました。晴天で見晴らしはよく、水面の波も高くなかったので落ち着きました。
日本から持ってきたフロートに残った空気を入れて、シュルルルと立ち上げ。船の方も、無事に気がついてくれて、こちらに拾いに来てくれました。
フロートって、ただのビニール風船のようなものなのに結構な値段で、買うかどうかとても迷った末に購入したのですが、買っておいて本当によかったです。
バディがいい人で本当によかった
本当に怖い思いをしました。
バディのフランス人のおじさんがしっかりした方で、命拾いをしました。何度も片言のフランス語でお礼を繰り返しましたが、おじさんは特に危険な体験をしたという感じもなく、穏やかに笑っていました。
一歩間違えば、おじさんを巻き添えにするところでした。
どうすればよかったのか?
おそらく、ガイドさんの想定以上に流れが速かったのだと思いますが、飛ばされてもボートは拾ってくれる心づもりだったんだと思います。(当たり前ですが)
ちなみに、浮上したのは、各バディともバラバラな場所でした。
それにしても、残圧がゼロになってしまって、もしも身勝手なバディと一緒だったら、一人ぼっちで飛ばされて、空気もなくなるところでした。
ダウンカレントのような、海底に向かう潮ではなかったのだから、もっと冷静に対応するべきだったのかも。
…ということなどを、ボートに上がってからも言葉が通じなくて、ちゃんと話し合うこともできませんでした。
海外でドリフトダイビングで流されて行方不明になる話がたまにありますが、こういう感じなんでしょうか?
私は、それまで、伊豆の神子元や熊野の古座など、わりとハードなドリフトダイビングをしたこともありましたが、この時以降、流れが急な所に行くのは止めました。
ドリフトダイビングの安全対策
こういう急な流れに体を固定するために「カレントフック」も販売されています。岩場にフックをひっかけて、体が吹っ飛ぶのを防ぐ道具です。でも、あの時のあの場所で、私にこれを使う余裕があったかというと、NOだったと思います。
伊豆の神子元のダイビングショップがやっているドリフトダイビングの安全対策のページを見つけました。このぐらい徹底してやってもらえると安心できます。
海上保安庁の安全対策のページです。
ビヤドゥ島はこんなところ
ちなみに、モルディブのビヤドゥ島は、島の周辺がハウスリーフ(サンゴの林)になっていて、シュノーケリングでもダイナミックな海中風景が見られます。基本はビーチエントリーで、各自が勝手にビーチから徒歩で潜るシステム。
ガイドがつかない自己管理のダイビングが主流になるので、腕に自信のないダイバーは少ないリゾート。おしゃれとか癒しよりも、潜りたい人のための質実剛健なリゾートです。
メジャーなリゾートによくいる新米ダイバーの手際の悪さに巻き込まれるのがいやでそこを選んだのですが、自分がお荷物ダイバーになってしまいました。
手ごろなサイトがみつかりませんでしたが、こちらをどうぞ。
■■関連の記事