夏休みの自由研究 田んぼの生き物調べ
小学校5年生で稲作について学ぶと思います。田んぼに行ったり、バケツ稲を育てたり。
わが家は子どもと一緒に、その時期に田んぼの生き物調べをやってみました。
↑ 学校が契約している田んぼの観察中。
どこの田んぼを観察するか
都会の場合
都会の場合は近くに田んぼがなくて、気楽に観察に出かけるのは難しいかもしれません。わが家は里山公園で仲間と無農薬田んぼをやっていたので、そこをメインのフィールドにしていました。
「ミズカマキリとかタイコウチが見たい」というので、ネットで調べて、もっと環境のいい稲作地帯まで遠出したこともありました。
時期によって生物相がどんどん変わるし、田んぼの水の状態(夏前に中干しといって水を抜く)も変わるので、何度も同じ場所に行くことをおすすめします。
田舎の場合
下の子の時は田舎に引っ越していたので、徒歩圏内に田んぼがたくさんありました。同じ地域でも、周辺の環境や農家の管理の仕方で生物相が全然違っていました。最初はいろんな田んぼを見に行くことをおすすめします。
地主さんに挨拶
空き地などと違って、大切なお米を育てている場所なので、農家の方に許可を得て見せてもらう方がトラブルがありません。姿を見かけたら、ご挨拶してやっている内容をお話しました。
今どきは、農作業はすべて農協にお任せで、オーナーは田植えと稲刈りぐらいしか田んぼに来ない、というところもたくさんあります。挨拶したくてもお会いする機会もありません。かなりびっくり。
観察していたら、除草に来た農協のお兄さんに「作業をしてもよろしいでしょうか?」なんて許可を求められてしまったこともありました。
どうやって観察するか
自分たちの田んぼは作業しながら
作業で田んぼの中に入れるので、いろんな生き物が見つかります。
代掻き(しろかき)は土を掘り返すので地面の中にいるカエルやケラなども出てくるし、特に稲刈りは、刈り取って稲がなくなった田んぼを、たくさんのクモたちが逃げ回るところが見られます。こんなにたくさんのクモが隠れていたのかと驚かされます。(どちらも夏休み中じゃないですが)
稲が成長して来たら、稲穂をたたいて、落ちてくる虫を大きな下敷きのようなものに受けて、どんな虫がいるのか記録。虫とり網で泥をすくって、中にいる虫をプラ容器に移して観察したりもしました。
よその田んぼはルッキング
稲穂をたたいたりはなるべく控えめに、昆虫採集で言うところのルッキング採集で。稲穂をしらみつぶしに見て、見つけたものを写真に撮りました。
「虫見板」で観察するという発想
稲をたたいて落ちてきた虫を見る
↑ この本は農業の生産性を向上するためには、そこにいる生き物たちを見て、適切な対応をして稲を育てようという発想の、「農家の方のため」の本ですが、観察する者にも便利な本です。
本の中に「虫見板」という、大きな下敷きのようなものを使った観察方法が出ています。虫見板は購入することもできますが、わが家は100均の粘土板(A3サイズくらい)で代用。
稲につく虫は、ただ見ているだけだとなかなか見つかりませんが、稲穂を数回軽くたたくと、小さなウンカやクモがたくさん落ちてきます。落ちてくる虫たちを色の濃い下敷きで受けて、何がいるのかを見るという観察法です。
実際の画像はこちら → 虫見板_現代農業用語集
害虫か益虫か
虫見板での観察は、本来は農家のためのものなので、「どの生き物が何を食べるのか?」「益虫はどれで、害虫はどれなのか?」を見極めるのが目的です。
むやみに殺虫剤をまいて虫を全部殺してしまうのではなく、益虫を増やし、害虫駆除も益虫に任せ、むだな農薬散布は減らしたいという考え。
わが家で虫見板を使い始めたころは、この宇根さんの本ぐらいしか情報がありませんでしたが、最近はネットで検索すると、環境教育の場でかなり普及しているようです。
あると便利なもの
- 虫見板
- デジカメ
- 虫とり網(泥もすくえて、飛んでいるトンボも捕れるもの)
- プラ容器(小さいタッパー、フイルムケースのようなもの)
- 熱中症対策の帽子や水筒
- タオルやお手拭き
実際に見つかる生き物
これはもう、田んぼによってさまざまでした。
無農薬や低農薬の田んぼだと生物相も多様だし、田んぼの周りが道路なのか雑木林なのかでも、大きく違っていました。
雑草を取るタイミングも大切なようで、草ぼうぼうの田んぼの草を刈ると、刈った後は草にいたカメムシたちは稲に移動していました。
クモ類、カメムシ、ガ、バッタ、カマキリ、ウンカ、ヤゴ、トンボ、コオイムシ、ガムシ、ヒル、豊年エビ、巻貝、寄生蜂…。蛾の幼虫を狙うアシナガバチやクモを狙うベッコウバチなんかも来ています。
マムシやヤマカガシに至近距離で遭遇したこともありました。
子どもが作った小5の自由研究のまとめを見てみると…、
昆虫72、クモ20、カエル3、ヘビ3、鳥4、そのほか6で、合計108種類となっています。「種類」なので、実際に遭遇した数はもっとたくさんです。
4か所の田んぼに、のべ15回出かけたと書かれています。(実際に活動した日は8日)
↑ 1度すくっただけでこれだけはいる田んぼも。ホウネンエビ、オタマジャクシ、コモリグモなど。
かなり大変な作業です
肉体労働が大変
真夏だし、田んぼは雑木林と違って炎天下です。熱中症との戦いです。
できるだけ午前中に出かけましたが、午後から網を張り始めるクモが多いので、午後から夕方にかけても行きました。
親子2人で田んぼの端から虫見板をたたいて、落ちたものを精査していくのはかなり時間がかかってしまいます。大人は腰も痛くなります。
すべてデジカメで撮りましたが、泥をすくったりして汚れるので、カメラにも泥がついてしまったり…。最近は防水のデジカメがありますが、あの時ほしかったと思います。
同定作業も大変
デジカメで記録しておかないと、忘れてしまうし、後で同定するときに困ります。
その場で一目見て種類がわからないと、持ち帰って図鑑を見ながら同定することになります。わが家ははじめにクモ調べをやってから全体の生き物調べをしましたが、クモや虫に詳しい人と一緒でないと、いきなり全部の生き物を調べるのはかなり大変かもしれません。
クモはオスとメスで色や形が違うものが多いですし、幼体と成体でも違います。カメムシも幼虫と成虫でかなり形が変わるものもいます。卵のうや蛹を見て、なにのものなのか判断する必要も出てきます。
田んぼは、普通の昆虫図鑑に載っている虫以外に、クモやウンカ、トビムシなどもたくさんいますし、両生類や爬虫類、鳥類もいます。図鑑やネット総動員で調べました。
↓ 田んぼ特有の虫はこちらの図鑑で調べました。
↓ クモはこちらの図鑑で。
まとめ方
田んぼの観察は、小4でクモの観察、小5で生き物全般(虫・鳥・魚…)の観察をしました。
どちらも、見つけた生き物すべての写真を撮って、何をしていたかを観察して、1種類1ページにまとめ、全てを1冊にファイリング。
まとめとして、クモのときは、略地図を書いて見つけたクモの明細を書きました。
田んぼ全般のときは、稲作にとっての益虫と害虫に分けてファイリング。何が何を食べるのか、何のためにそこにいるのか、食物連鎖の関係をイラストを描きました。
グループでやるのがおすすめ
学校でも、夏休みの宿題として田んぼの観察を2回はやってくるように言われていたので友だちとやることをすすめましたが、かなり地道な作業なので、乗ってくる子は全然見つかりませんでした。
実際に友だちを連れて行ってみたことがありますが、虫やクモが特別好きでもない普通の小学生の子には、生きものなんて何もいないように見えるようですし、黙々と虫見作業をさせるのは難しいようでした。遊んでしまいます。
こんなことに気をつけて
毒のある生き物
雑木林の虫とりと違ってスズメバチは出てきませんが、代わりに毒のあるマムシやヤマカガシなどのヘビが出てきます。
湿った場所を好むアオバアリガタハネカクシの体液が肌につくと、ひどくかぶれるのだそうです。踏みつぶしたりしないように気をつけて。
↑ 虫見板に落ちた虫。右がアオバアリガタハネカクシ。体液に毒があります。
農薬を被爆しないように
一般の田んぼは、農薬や除草剤がたくさんまかれています。観察した後は、できるだけ速やかに手を洗って着替えをした方が安心です。
農家によっては、私たちが観察していると、親切で農薬を散布し始める方もありました。「虫がいると観察していて気持ち悪いだろうから」と言って気を利かせてくださったようですが、子どもの頭越しに噴霧器でバンバン散布し始めたので、「よーく観察していってね」と言われましたが、なにを観察すればいいんだろう。お礼を言って早々に退散しました。
…見解の相違です。
小さい子も遊びとして
記録してまとめようとすると、小学校高学年でも嫌になってしまう作業ですが、遊びとしてやる分には小さい子も楽しめます。
近くに田んぼがあったら、ぜひやってみては?
これをやってみると、日本のお米はクモたちに守られているのがとても実感できて、とても「クモ嫌い!」なんて言えなくなりますよ。
みんなで 待ってます kero