小学生のジョロウグモの自由研究が高度でびっくり
夏休みの自由研究の自然観察部門の総本山(?)に、自然科学観察コンクールというのがあります。今年の夏で第57回めの開催になる歴史のあるコンクールです。
今ごろ気がついたのですが、第55回のコンクールでクモのすごい研究をしている小学生がいました。
直近の入賞一覧はこちら。
第56回 入賞作品一覧 | 入賞作品(自由研究) | 自然科学観察コンクール(シゼコン)
↑ 10月になって成熟したジョロウグモのメス
小学生のジョロウグモの自由研究
2014年のコンクールの小学校第一席(!)は、岐阜県の4年生の女の子のジョロウグモの研究でした。
入賞一覧はこちら。
第55回 入賞作品一覧 | 入賞作品(自由研究) | 自然科学観察コンクール(シゼコン)
彼女の研究内容はこちら。
ちなみに、彼女はその前年にもジョロウグモの研究をして入賞しています。
研究内容が高度!
上記のサイトをご覧いただければわかると思いますが、とにかくもう、びっくり高度な研究です。文系の私なんて、一回死んで生まれ変わっても、思いくこともできない調査・分析能力です。
「ジョロウグモがどうしてこんなにいるのか」という疑問を元に、ジョロウグモの生態や網の構造、身体能力を同じような大きさのナガコガネグモと比較しています。
各種調査の着眼点もさることながら、調査対象の頭数に驚かされます。ジョロウグモ337頭、ナガコガネグモ47頭、アシナガグモ12頭…。どうやって数えたんでしょうか。
わが家は親子二人でシャカリキになっても、こんなに大量のクモを観察できなかったし、だいたい個体差を識別できなかったです。ひとつひとつアサギマダラみたいにマーキングでもしたんでしょうか?
たくさんの観点からの実験・観察
ざっとまとめても、これくらいの分析をやっています。
- 卵のうから子グモが孵る様子の観察。
- 子グモたちは、自分より大きなエサは食べられるのかの実験。
- 子グモにリーダーはいるのか。バルーニングの時の行動観察。
- 活動と気温や日照、風速との関連性を調査。
- 網の大きさを計測。
- 糸の強度、伸び強度、粘着性も方法を考えて実験。
- タコ糸でクモの網の2倍標本を作って、ナガコガネグモの網と比較。
- どれだけ糸を出し続けられるかの実験。
- 視力や聴力の実験。
- 網の中をどのように振動が伝わるのか、調査と考察。
- ビデオ撮影をして、エサへとびつく速度を算出。
- エサの捕り方(噛む、糸を巻く)の違いを観察。
私も、わが子がクモの観察をやりだして、巻き込まれてしまったくちですが、彼女の研究は、もう、とにかく「すごい」としか言いようがありません。
生きものを研究しようとする人は、ただ眺めているだけではなくて、計測してデータから検証しなければだめですね(^^;) どうやったら実証できるのか、具体的な方法を自分の頭でひねり出す力も必要です。そして、この観察対象の量の多いこと!
どうやって、これだけの研究をやったんでしょう。いろんな観点の実験を考えるだけでも大変だし、調査対象のクモの数が、アシスタントを抱えてフィールド調査をする研究者並みに大量です。
小学校4年生が…。私もいろんな子どもを見てきましたし、いろんな子がやったクモの自由研究も見てきましたが、こんなすごい研究を4年生で、考えてやり遂げる子なんて、見たことがありません。
私たち親子の観察スタイル
私たちは、どんなクモがいるのか、まずは調べるところから始めて、出会ったクモの行動を観察して違いを知りました。コンクール提出とか考えずに自己満足な観察…。
でも、そんなことじゃダメなんですね。こちらから狙いを定めて打って出なければ「研究」とは言えないんだな…。
私たちの観察は、「網をを壊したらかわいそうだから」「刺激したら悪いから」なんて言っていて、ビーティング採集すらめったにやりません。
研究者としては、こんな方法では真実を解明できないんでしょうね…。
私自身は、子どもの自由研究も今後はありませんが、少しは自分の頭で考えて観察しなければと反省しました。
参考資料 :「クモの科学最前線」
クモの研究者の人たちが、いろんな分野で取り組んでいる研究がまとめられています。私の記憶が正しければ、この本の内容は少し前に開催された日本蜘蛛学会で発表された論題です。今回の小学生の自由研究は、こういう場でも堂々と発表できるレベルでは?
白黒で文字ばかりの本で、子どもには難しいですが、研究者でなくても参考になる内容です。クモの解説書は、昆虫の雑誌のように一般的なものが少ないので、役に立ちます。
クモの科学最前線 もくじ
Ⅰ 進化と多様性
- クモの系統と多様性
- クモの網の特徴とその機能
- クモの餌
- クモと天敵
Ⅱ 生態系との関わり
Ⅲ 糸の活用
- クモ糸の活用
追記
自然科学観察コンクールのサイトをもっとよく見ていたら、現在のクモの研究者の方のページが見つかりました。上記の本の「水田のクモ」を書かれた方です。