クモが好き クモの巣・クモの網もいろんな形がある
「クモは怖くないよシリーズ」の第四弾。
一般的には「クモの巣」と呼ばれている「クモの網」についてまとめてみました。
「クモの網」のことを、クモに興味のない人は「クモの巣」と言いますが、クモは網の上に住んでいるものもいれば、網の傍らに住居を作って隠れているものもいます。
↑ 霧の中で撮ったクモの網。
- 一番身近なジョロウグモ
- イラストに出てきそうなクモの網
- 網にゴミをつけるクモ
- 隠れ帯をつけるクモ
- キラキラして美しい網
- ガーゼのような網
- ゆるゆるでベタベタの網
- 見た目が汚い網
- これもクモの網
- おしまいに
- クモの巣・クモの網の参考資料
一番身近なジョロウグモ
世間の人が「クモの巣」と聞いて思い浮かべるのがジョロウグモの網ではないでしょうか。今の時期は特に網の大きさも最大になる時期で、庭先や街路樹でたくさん見かけます。枝と枝の間に網を作るので、顔に引っかかって、嫌われる原因になってます。
あまり気がつく人はいないかもしれませんが、このクモは5月に卵のうから出て、6月には木の茂みに小さな網を作ります。それがだんだん大きくなって、今のサイズに…。
秋になると、横糸が黄色っぽくなります。 ジョロウグモの網は、上の方がつながっていない円網。蹄形円網と呼ばれています。
近くで見るとわかりますが、円網の前後に不規則な糸が張り巡らされています。
横糸が黄色いのは、ついている粘球が黄色いから。獲物はこの粘り成分で、網に絡まってしまう仕組み。
6月初旬、まだ独り立ちしたばかりのジョロウグモはこんな感じです。バックに写っているのはツツジの葉っぱです。まだ体長数ミリのおちびさん。小さい頃はまだ馬の蹄形ではなく、上の方にも横糸がある円網です。
イラストに出てきそうなクモの網
コガネグモの仲間たちは、よくイラストに描かれるようなクモの網を張ります。
絵本やお話にもよく出てくるオニグモの円網。主に夜間にしか網を張らないので、夕方観察に行ってみて。昼間は物陰で丸くなっています。
コゲチャオニグモも夕方になると網張りを始めます。
青緑色が美しいサツマノミダマシも夜行性。夕方になると、雑木林の脇でクルクルと網を張っているところが見られます。
ナカムラオニグモの網が完成したところ。獲物が多い場所に網を張るので、すぐに網は獲物が掛かって目が崩れます。
ギンメッキゴミグモは、昼間も網の中にいます。よく見ると、目がとても細かくて繊細な網です。(右上の綿毛はたまたまついてしまったもの)
クモとしてはめずらしく、珍しく頭を上にして網の真ん中に鎮座しています。
こちらも目が細かくて繊細な網を張るコガネグモダマシ。狙う獲物が小さい虫なんでしょうね。コガネグモダマシも夜しか網を張りません。
金色の横糸が美しいビジョオニグモ。日の光が上手く当たると、キラキラととても美しく輝く網です。ビジョオニグモは、クモご本人は網につながった葉っぱに巣を作って隠れています。(この場合は写真左上)
ビジョオニグモご本人はこんな感じ。怒った顔をした人面グモだと、私は思っていますが…。
イエオニグモも夜に網を張って朝たたむクモ。お店の電灯などの明るい場所で見かけます。この網は、アリの結婚飛行の日だったようで、羽アリがいっぱい。
網にゴミをつけるクモ
ゴミグモの仲間たちは、網の上に食べかすや自分の脱皮殻、卵のうまでくっつけて、クモ本人もその中に隠れています。
こちらはゴミグモ。卵のうが3つついています。
このゴミグモは、まだ卵のうを作る前の時期。
マルゴミグモは地面にやや水平な円網を張って、ゴミや卵のうをくっつけます。写真上部が卵のう。こちらは真上から見下ろして撮ったもの。
隠れ帯をつけるクモ
網の中に「隠れ帯」と呼ばれる飾りのような模様をつけるクモもいろいろいます。個体差、成長段階、満腹度合など、さまざま条件によって模様が変わって面白いです。
ナガコガネグモの幼体は、こんな感じで自分の居場所(甑)の周りに隠れ帯をつけます。かえって目立つと思うんだけど…?
ナガコガネグモ、大人になると縦線の隠れ帯が増えます。
カタハリウズグモも、隠れ帯が目立つクモ。満腹度合によって、隠れ帯が丸型になったり縦線になったり、同じクモでも変わります。
上からのぞいたところ。2つの網(網は1頭ずつ別々に張ります)が重なっています。
こちらは、縦にギザギザの隠れ帯のカタハリウズグモ。満腹の時はこの形になるそうです。
コガタコガネグモも隠れ帯がおもしろいクモ。
ヨツデゴミグモは、落書きのような隠れ帯をつけます。
キラキラして美しい網
シロカネグモ類は、地面に水平に張った網が美しいクモです。
雑木林の木漏れ日に光るコシロカネグモの網。クモは網の下にぶら下がっています。
下から見上げたコシロカネグモの網。 このクモは網に仰向けになってぶら下がっているので、ぱっと見はお腹しか見えません。背中は白銀色の美しいクモですが、私たち親子は初見のころは緑色のお腹だけを見て「緑のクモ」と呼んでいました。
田んぼの稲を守るチュウガタシロガネグモ。
ガーゼのような網
スズミグモはドーム状の部分と上下に不規則網を持つ大きな網を張るクモです。ジョロウグモよりももっと大規模な作り。ドーム状の部分が、目の粗いガーゼのようになっていて、とても美しい網です。
クモご本人は、ドームの真ん中に仰向けにぶら下がります。クモが成長すると、網はどんどん巨大化し、イソウロウグモなどのお客さんも増えます。
ゆるゆるでベタベタの網
トリノフンダマシは、ゆるゆるで粘り気いっぱいの網を張ります。
夜しか張らないので、夜間観察が必要です。私たち親子は、毎日のように見に行きましたが、網を張る時刻がその日の湿度などの気候によって全く変わります。8時に張っている日もあれば、0時になってもまだ張っていない日も…。某先生に質問してみたら、夜遅くなっても必ず一日一回は張るのだそうです。
トリノフンダマシの網は「同心円状円網」と呼ばれていますが、ダラダラな構造なので、野外ではなかなか同心円に見えることが少ないです。
見た目が汚い網
物置やフェンスにぐちゃぐちゃのぼろ網を張るクロガケジグモ。
庭木に網を張るならまだ目立たないし、夜だけ張るのなら許せるけれど、人工物に堂々と張りっぱなしなので困ります。クモご本人は、昼間は物陰に隠れています。
夜、羽アリを捕獲するために表に出てきたクロガケジグモ。
クロガケジグモの網は、網だけ掃除しても、このクモ本人を退治しない限り、すぐにまたこんな感じに汚してしまいます。
このぼろ網には粘り成分はついていません。
第四脚(一番後ろの脚)が櫛状になっていて、いったん糸いぼから出した糸を念入りに櫛けずることで獲物がかかりやすい形状にしています。梳糸(そし)という細かい糸が集まった状態です。夜中に櫛けずっているのよく見かけます。
縦に長い糸を渡し、その間をつなぐように梳糸をつけます。
これは、夜中に第四脚で糸をしごいているところ。
庭木や街路樹の上に大きなお皿のような形の網を張るコクサグモ。
お皿状の網の上に不規則網を張って、そこに迷い込んだ虫を捕まえます。クモご本人はお皿の下部に作ったトンネル内に隠れています。ツツジやサツキの植栽の上にこのクモの網がぎっしりと続くところをよく見かけます。
こちらは、葉っぱの上に網を張るネコハグモ。
網の形も汚いし、食べかすをそのままにしているので、このクモも結構見た目のよくない網だと思います。
これもクモの網
ヒラタグモは、古い家や物置の壁などに、白い色の塊を貼りつけます。塊から四方八方に放射線状の糸(通信糸)が張り巡らされています。壁が白いのでわかりにくくてすみません。通信糸に虫が引っかかったら、中からクモが出てきて捕獲。
一枚めくると、ヒラタグモクモが出てきます。その下には卵のうを覆う一枚の幕があります。
通信糸がわかりやすいヒラタグモの網をもう一枚。放射状に広がる細い糸。
ジグモが壁に作った地面際に並ぶ管状の網。これは網というより巣かな? クモが中に隠れています。
そーっと管を引っ張ると、ジグモが釣れます。空っぽのものも多いですが。
以前、子どもがやったジグモ釣りの成果です(^^;)
おしまいに
本当はもっとたくさん種類があるんですが、とりあえず「見た目」を基準にピックアップしてみました。クモの分類学からはちょっと外れたまとめ方だし、私が撮った写真の中からのセレクトです。
クモの網は、私が見たことのないものもまだまだたくさんありますし、網を張らないで徘徊して獲物を探すものもいます。
身近な糸の塊の正体がなんなのか。じっくり見て何が隠れているのか、調べるのもおもしろいです。クモじゃなくて、蛾の卵の可能性もあります…。
クモの巣・クモの網の参考資料
クモの網の美しい写真が次々に出てくる絵本です。ちょっとクモの名前が違っているところもありますが、導入としては大変おすすめです。
身近なクモの網を調べるには便利な図鑑。振り仮名がついているので、子どもにも大人にもわかりやすい説明です。
クモの網を実際に青いボール紙に貼りつけた標本を写した作品集です。私は、スズミグモの網の美しさをこの本で知りました。
クモの網の標本作りは夏休みの自由研究にもおすすめです。船曳さんが実際に標本を作られるところを拝見したことがありますが、私たちのような素人がやると、こんなにきれいに作れません(^^;)
クモの習性に詳しく、さまざまなやり方を試行錯誤された結果の作品だと思います。
田んぼはクモのパラダイスです。
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