虫はともだち

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街路樹の農薬散布が歓迎される街

家のポストに、市の担当部署からの「農薬散布のお願い」の手紙が入っていました。しばらく止めていたのに今年は街路樹に農薬をまくことにしたようです。

わが街は農薬散布賛成の奥さんが大多数ですが、私はずっと前から嫌悪しています。

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↑ 近所のケヤキ並木。

郊外は農薬を被爆する機会が多い 

都会は道路に回す土地が足りないので、住宅街の中まで街路樹があるところは少ないように思います。

それに比べて、郊外の新興住宅街は、計画的に街路樹や公園が設計されていて、見た目は大変緑が美しいですが、緑を維持するための管理が必要です。

わが街は、契約業者が定期的に明け方に大量の殺虫剤を街路樹や公園のグランドに散布していきます。延々と続く芝生にも真昼間に殺菌剤とやらを散布しています。

街路樹に向けてホースから発射された農薬は、それぞれの家の壁をもびっしょりと濡らします。

空気がきれいな田舎に越してきたはずが、こちらの方が危険です。

奥さんたちが農薬散布を歓迎する訳

この辺の奥さんたちは、農薬を散布されれば、全てが浄化されると勘違いしているところがあります。「殺虫剤散布」なのに、「消毒」と呼ぶ人がほとんどです。

たしかに嫌いな虫の数は一時的に減るかもしれませんが、スミチオンもマラソンも植物に浸透する薬剤ではないので、すぐにまた成虫が卵を産みに来ます。

汚染されこそすれ、まな板除菌かなにかのように滅菌消毒されるわけではないと思います。

虫の発生とはリンクしていない農薬散布

私は常日頃から虫を探しながら散歩しているので、街路樹に毛虫が大量発生していればわかります。殺虫剤の散布と毛虫の発生は特にリンクしているとは思えません。

この街で集中的に発生する毛虫は、マイマイガアメリカシロヒトリ、ヒロヘリアオイラガくらい。局所的にミノガの仲間(ミノムシ)が繁殖しています。他地域でよく嫌われるチャドクガは、それほど多くありません。

今のところ、今年はそのどの毛虫も、気になるほどではありません。なのになぜ散布?

大体、農薬が必要なの?

街路樹に毛虫が発生しても、ほとんどは小鳥たちがこまめに捕食しています。

私が見ていて、街路樹への影響が大きいと感じるのはアメリカシロヒトリぐらい。アメリカシロヒトリの幼虫は、街路樹の葉っぱを食べつくして丸裸にしてしまうのをよく見かけます。ただ、すべての木を食べつくすわけではなく、局所的に集中して食べつくすので、駆除したいのならそこだけ殺虫剤をまけばいいように思います。

死んだ毛虫を食べる鳥たち

殺虫剤散布の朝は、地面にぽろぽろと毛虫が落ちています。死んでしまったものや、まだ息のあるものなど、ちょっとした地獄絵図。

その毛虫は誰か清掃係が片づけるわけではありません。小鳥たちがきれいに回収していきます。クモや肉食の昆虫たちに捕食されているのも見かけます。

こういう捕食者たちへの農薬の影響はどの程度なのでしょうか。

見ていると、殺虫剤散布の後もクモたちは今まで通り網を張って元気です。スミチオンとかマラソン乳液って、虫に効いてクモには効かないの?

いずれにせよ、死んだ毛虫を食べる生き物たちに薬剤が濃縮され、食物連鎖の末に、ほかの生き物たちにも影響が及ぶのではないかと感じています。

犬が心配

明け方散布した農薬は、通勤通学のころにちょうど揮発して、その空気を吸い込みながらみんなが移動します。その点もかなり心配ですが、とくに直接影響がありそうなのが、散歩の犬たちです。

仕方がないので、農薬散布の日は別の方面に抱っこして散歩に連れて行きます。

これを機会に役所に聞いてみた

散布するかどうかの判断は? 

毛虫が多いかどうかは委託業者が街路樹を管理している中で「増えてきた」と報告し、それを参考にして役所が散布を決定しているとのこと。

役所自身も確認に来ると言っていましたが、そんな余裕があるとは、個人的には思えません。業者の言いなりじゃない?

「今年は毒のある毛虫の発生が多いのでまくことにしました」とのことでした。ヒロヘリアオイラガのことを言っているのだと思います。

ヒロヘリアオイラガは食樹をほとんど選はず、なんにでもつく虫。そう言われてしまうと、全ての街路樹にまくのを反対するわけにはいかなくなります。

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↑ ヒロヘリアオイラガの若齢幼虫。手で触るとビビッと強い痛みがきます。触ってはいけません。

散布希望の声ばかりらしい 

予想はしていましたが、「散布してほしい」という意見はたくさん来るけれど、「散布しないでほしい」という意見はないとのこと。

化学物質過敏症の人とか、この街にはいないんでしょうか。図書館に「沈黙の春」は置いていないの?

「ここ数年、この道はヤマトタマムシがたくさん飛び交って、名所にしてもいいくらいですが、それも死んでしまうのでは」と言ってみたけれど、「虫を守るために薬剤散布を止めるなんて聞いたことない」と一蹴されました。

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↑ 羽化直後のヤマトタマムシ

田舎だから民度が低いの?

無農薬や減農薬野菜を配達してもらっているお宅も少なくないのに(ラディッシュや生活クラブのトラックが来ています)、街路樹や公園の農薬にこれほど寛容な理由がよくわかりません。

公園のグランドは、子どもたちがサッカーや野球をやる場所です。グランドに念入りにまいているのは、殺虫剤ではなく除草剤だと思いますが、素手で触る土に念入りに薬をまくのはどうなんでしょうか。

雑草がないきれいなグランド。若い頃は私もそういうのをよしとしていましたが、実態を知れば知るほど心配になるのは、考え過ぎなんでしょうか。

  

沈黙の春 (新潮文庫)

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もしも化学物質過敏症になってしまったら―それぞれの克服対策とは

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