冬の虫探し 虫の痕跡を探そう_ハチの巣やガのまゆ
冬の虫探しのお話が続きます。
雑木林の枯れ枝や作業小屋や柵などの人工物を探すと、夏の間に虫たちが暮らしていた痕跡が見つかります。冬になるとスズメバチや蛇などの危ない生きものも姿を消すので、それまでは遠慮していた場所にも踏み込むこともできます。
ハチに刺されたら命に関わることもあります。生態をあらかじめ調べたうえで、大人が付き添って見に行って下さいね。
スズメバチやアシナガバチの巣
雑木林の中の作業小屋やフェンスを探すと、主のいなくなったハチの巣が見つかります。11月か12月になればどのハチもいなくなるので、巣を外して中を観察することもできます。
作業小屋の軒下にあったコガタスズメバチの初期の巣。
コガタスズメバチは女王一人だけの時期(5月ごろ)にとっくりをひっくり返した形の巣を作り、その後は丸い形の巣に形を変えます。きっと働きバチが生まれる前に巣の活動が停止してしまったと思われます。 せっかくここまで作ったのに…。
緑地公園に落ちていたキイロスズメバチの巣。
11月末でしたが、巣の中に生きた成虫も少し残っていました。たぶんタイワンリスに落とされたんじゃないかな。ボールペンは大きさ比較のために置きました。
作業小屋に落ちていたアシナガバチ(種は不明)の巣。
ずいぶん古いので、去年とか一昨年のものだと思われます。
泥で作った狩りバチの巣
狩りバチの仲間たちは、幼虫のためにイモムシやクモを狩って麻酔をかけ、泥で作った巣の中に卵と一緒に入れて立ち去ります。幼虫は泥の巣の中で餌を食べて育ちます。
トックリバチ
エノキの枝先にあったトックリバチの巣。既に巣立った後のようです。
このハチの巣はいろんな場所で見かけますが、樹種や場所にあまりこだわりがないようです。
庭に重ねてあった植木鉢の中にあったトックリバチの巣。 いつも見かけるのは1つずつですが、気に入ると同じ場所にいくつもトックリを作るようです。
トックリバチではなくて寄生バエが出てきた巣。楽しみにしていたのに…。
ちなみに、トックリバチはこんなハチ。幼虫の餌になるチュウレンジバチの青虫を狩るためにモッコウバラの枝に来たところ。(この写真に青虫は写っていません)
ムモントックリバチ
アカマツの幹にあったムモントックリバチの巣。
擁壁の水抜き穴の奥にあった巣。野球の壁当てをしていたら、ここにハチが出入りしていたのだそうです。
ちなみに、ムモントックリバチはこんなハチ。側溝に泥を固めているところ。
スズバチ
田んぼの脇のニセアカシアの枝先にあったスズバチの巣。丸いボール状です。
カシの木の幹にあったスズバチの巣。ボールをつぶした感じ。
墓石にあった泥の巣。毎年できて、毎年掃除しています。ネットで調べると、これもスズバチの巣のようです。
たぶんこれもスズバチの巣。こちらはまだ作りたての巣。(9月上旬)
友人の家の壁にあった縦に長細い泥の巣を崩してみたら、1室ごとに卵が一つ産みつけられていて、緑色のイモムシが大量に入っていました。泥が思ったよりもずっと硬くて、スコップで崩しました。
ちなみに、スズバチはこんなハチ。土を団子にして運び去る瞬間。
ほかの狩りバチ
親が離れてしまって、何のハチの巣なのかよくわからないけれど、泥で作った巣はほかにもいろいろ見つかります。
雑木林の作業小屋の隙間にあった泥を剥がしたら、こんな風になっていました。写真ではわかりにくいですが、エサになっていたのはクモのようです。
まだ生きている巣をもう一つ。葉っぱの裏にできた泥の巣。ヒメベッコウの巣ではないかと思います。(8月上旬)
上の泥の巣、砕いてみたら、イモムシやクモが出てきました。
ガのまゆ
マテバシイにあったヤママユのまゆ。天蚕といわれるヤママユ。高級な絹糸が取れます。
まゆが見つかった辺りを探すと、卵が見つかることもあります。
ヤママユの卵はこのまま冬を越して暖かくなると赤ちゃんが生まれます。(背景に写っている白いものは、ジョロウグモの卵のうです)
葉の落ちたクワの木にぶら下がってたクワコのまゆ。カイコの原種です。
クワコのまゆも、雨風にさらされると、こんな感じになります。
梅の枝先にぶら下がっていたウスタビガのまゆ。ウスタビガはまたここに産卵に来るそうです。
虫やクモの卵
橋の欄干や公園の柵などの下をのぞくと、いろんな生きものの痕跡が見つかります。
上の青丸はセンショウグモの卵のう、赤丸はマイマイガの卵塊、緑丸の枯れ葉のようなものはコガタコガネグモの卵のうです。それぞれ、卵の状態で春を待ちます。
クモの卵のうについては、また別の記事にまとめたいと思います。
参考になりそうな本
従来の図鑑よりも、虫が暮らしている様子やさなぎの中身のカラー写真がたくさん載っていて、虫たちの生活にぐっと迫った内容の図鑑シリーズです。
小学生のアシナガバチの自由研究。魔法使いならぬ「蜂使い」の少年です。
虫こぶ
暖かい時期にアブラムシなどが作った虫こぶ。
冬になると中の虫がよそに出て空っぽになったものも見つかります。
イスノキにできた虫こぶで笛を作るお話です。
おしまいに
ハチの巣やまゆを見つけたら、構造や中身を確認してみるのもお楽しみの一つです。もう中身はいなくなっているので、ぜひ壊れないように持ち帰って、家でじっくり観察してみては?
スズメバチやアシナガバチの巣は、手に持ってみると驚くほど軽く、細工も細かくて精密です。人間のような雑な生きものには真似することもできないすばらしく繊細な建造物だと思います。