庭の黒アリを退治すると、シロアリが増える?
夏になると、お母さんたちの間で、どうやったら庭のアリを退治できるかといった物騒な話が増えます。ご近所には、アリに限らず、植物も虫も全部ゼロの庭にしたらすっきり暮らせると考える人も少なくありません。
私も庭の虫の観察を始める前は、家の中に入るアリに対して徹底的に殺虫剤をまいたこともありましたが、一つの生き物をせん滅すると、ほかのものが増える原因にもなるようです。
※追記2017.10.
この記事は「庭のシロアリは黒アリとも関係がありそうだ」と感じた過去の経験談をまとめたものですが、ヒアリ騒動があってから、アクセスが増えました。
黒アリはヒアリの侵入に対しても一定の効果があるようです。
↑ ルリアリ。家電製品などに入って問題を起こすアリ。ハチの巣も攻撃するんだとか…。
黒アリを退治したらシロアリが
黒アリが家に侵入
前の家に住んでいたころの話です。
7月初めに、家の中でトビイロケアリを発見。たどってみると、玄関のドアのすき間から食堂のテーブル下に向かって廊下の隅を通って、アリの行列ができていました。結構な距離!
下の子がまだ小さいころ、食堂のテーブルの下によく食べ物をこぼしていました。玄関先にあるカブトムシの昆虫ゼリーに見向きもせずテーブルに向かうところを見ると、甘いものよりもタンパク質が好き?
毎日アリを捕獲して、通り道を雑巾で拭いてもアリの行列はなくならず。
庭のヒノキに大きな巣が
トビイロケアリの行列がどこからきているのかたどってみました。
玄関のドアのすき間、庭木のアブラムシ多発地帯を超えて、庭の隅にあるヒノキの大木の中に巣があるようでした。
家の二階よりも高いヒノキ。簡単に切り倒すこともできません。
仕方がないので、アリの駆除剤を周辺にまいてみました。2度ほどまいたら、家の中にアリが来ることもなくなりました。庭にはほかのアリもたくさん巣を作っていて観察していたので、薬剤は極力トビイロケアリの巣穴だけに投入。
↓ こんな感じの薬をまきました。
その後その巣を見ていても、アリの出入りはあったので、巣が全滅したわけでもはないようでした。勢いを弱めたことで、家への侵入は止まりました。
シロアリの登場
7月末、ヒノキの隣りの弱った木にヤマトシロアリを見つけました。樹皮を剥がしてみると、蟻道がずっと続いていました。
ちなみに、黒アリもシロアリも羽アリが飛んで繁殖しますが、黒アリはハチの仲間で、シロアリはゴキブリの仲間で、生活も全然違います。
この木が目に見えて弱り始めたのはその年の初夏になってから。玄関の正面にある木なので様子はいつも気にしていました。
シロアリが庭に来て定着したのはもっと前のことなのかもしれませんが、この木で一気に広がったのはその夏のことのようです。
黒アリはシロアリ除けの働きもある
雑木林でシロアリのいる切り株を掘り出したりすると、黒アリがわっと集まってきて、シロアリを運び去ります。
特にハリアリの仲間はシロアリを好むそうです。トビイロシワアリがシロアリを運んでいるのも見たことがあります。
↑ 庭の雨水貯水容器の下に巣を作っていたオオハリアリ
そうかと思うと、一つの切り株にヤマトシロアリとトビイロシワアリのコロニーが隣り合っていたりもします。シロアリは、自分たちが弱いので、黒アリをほかの攻撃者からの盾にしているという意見もあるようです。
個人的な印象としては、黒アリたちはシロアリが過剰に拡大するのを防ぐ働きをしているような気がしています。 大量にいたトビイロケアリを減らしてしまったことがシロアリの増殖につながってしまったのではないかと感じました。
当時の庭に巣があったアリは…
トビイロケアリ、クロオオアリ、クロヤマアリ、オオハリアリ、キイロケアリ(たぶん)、アメイロアリ(たぶん)、トビイロシワアリ、アミメアリ、でした。
シロアリは普通に見かける虫
雑木林のシロアリ
雑木林ではシロアリは珍しい虫ではありません。
朽ちた切り株を崩すと、だいたいは黒アリの巣がありますが、シロアリが出てくることも。特に今住んでいる街はシロアリ頻度が高いです。
シロアリは地面の奥に大きな巣を作って、そこを本拠地にして周辺の切り株や朽ち木に食糧調達に来ているそうで、地面の奥の本丸は私たちには見えません。
シロアリ駆除
家を建てたばかりのころは、シロアリの業者に5年ごとに床下に必ず殺虫剤散布をするように言われましたし、5年経ったところで、定期点検を兼ねたセールスで担当の人が来たりもしました。
初めて庭でシロアリを見つけた時は、なんだか恐ろしい物を見つけた気分で、直ちにシロアリ駆除の会社に来てもらい、慌てて相談しました。
床下も点検してもらいましたが、そちらへの侵入はなく、庭木だけでシロアリが見つかりました。
ベイト方式で退治
↑ 庭にこういうトラップを何か所も設置。シロアリが集まってきたところ。集まる前の元々の木は溝のない積み木のような円柱でした。
最近は、床下の薬剤散布による防除ではなく、トラップを使ってシロアリをおびき寄せてベイト剤(毒餌)を持ち帰らせる方法も選択できます。
家族がアレルギー体質なので、床下の殺虫剤散布ではなく、ベイト剤を持ち帰ってもらう退治方法を選びました。
庭に十数カ所穴を掘ってシロアリが好きな木材を仕込んでおき、シロアリが集まってきたトラップの木材を薬入りの木材に差し替え。シロアリたちは、成長抑制剤の入った木材を食べて薬剤成分を巣に持ち帰り、仲間たちも脱皮できなくなって、巣ごと死んでしまうという仕組み。
業者さんが定期的にトラップを点検に来ていました。
これだと、地中にある本丸の巣もせん滅させることができそうです。
↑↓ トラップの木材を割ったところ。たくさんのヤマトシロアリが集まっていました。
床下散布かベイトか
当時はとにかくシロアリ怖さの気持ちが強くて、ベイト方式でせん滅してもらうことを希望しました。
今考えると、シロアリは毎年初夏に羽アリが飛んできて居つく可能性はいくらでもあるので、ベイトでせん滅したからと言って安心はできないと思います。
また、特定の生き物が死滅することで、ほかの生きもののバランスが崩れて思わぬ結果になることも考えられます。
黒アリがシロアリも黒アリも駆逐?
またシロアリ!
今までのお話は前住んでいた家のお話で…。
今住んでいる庭にも、入居当初は切り株や添え木にヤマトシロアリがたくさん見つかりました。
↑ 添え木についたヤマトシロアリ。羽アリになる準備中のニンフも見られます。
↓ 雑木林で見た結婚飛行直前の羽アリたち。5月9日撮影。
自分の家で実験するのもなんですが、とりあえず古い切り株や添え木はすべて撤去して、薬はまかずに様子を見ることにしました。ついでに、隣家のシロアリだらけの添え木も撤去。
また黒アリが侵入
当初は、前の家と同じように、大きなヒバの木にトビイロケアリの大きな巣ができていて、毎年、初夏になると家の中に侵入してきていました。
あまり気になる時は、アリの巣コロリを軒下に置いておくと、自然に室内には来なくなりました。こんなことが数年続いて…。
幹の中に巣があるせいかヒバの木が随分元気がなくなって、枯れ枝が増えました。庭師さんに頼んで、思い切って半分ぐらいに剪定。
「このままヒバの木は枯れてしまうのかな?」と思っていたら、木ではなく黒アリの方がいなくなってしまいました。
それ以来、家にトビイロケアリが侵入してくることもなくなりましたし、ヒバの木も元気です。
黒アリがいなくなったからシロアリが増えるのかと心配しましたが、その気配はなさそうでした。
肉食っけ満々の黒アリもいる
ここ数年、わが家の庭で一番目立つのがハリブトシリアゲアリです。
↑ 結婚飛行後の羽アリの死骸にたかるシリアゲアリ
弱った生き物や虫の死骸があると、このアリたちが真っ先に集まってきます。
結婚飛行後の羽アリや、植物についた芋虫、干からびたミミズ、駆除したアシナガバチの巣など、 あっという間にシリアゲアリがたかって持ち去るので、跡形もなくなります。見ていて怖いです。
バラにつくチュウレンジバチの幼虫が全然いなくなったのもこのアリのせいではないかと睨んでいます。産卵痕や食痕はあるのに、幼虫が見つからないので。
幸いシリアゲアリは今のところ家の中に入ってくる気配はありません。ほっ。
たくさんいたトビイロケアリたちもシリアゲアリに追い払われたのではないかと思います。
トビイロケアリが巣を作っていたヒバの木も、今ではがらんとしてしまい、ハリブトシリアゲアリがパトロールする姿がぽつぽつと見られるだけになりました。
ちなみに、シリアゲアリも雑木林では生木に巣を作っているのを見かけます。わが家のどこかの生木に巣があるのではないかと、探しています。
↑ ヒバの木を歩くハリブトシリアゲアリ
シロアリはいなくなった?
入居した時に、ほとんどの枯れ木や添え木は撤去しましたが、一つだけ朽ちた添え木を残しておきました。
いつかシロアリが地面の奥から腐った木材を食べに来るかもしれないと思っていました。最近抜いて確認したところ、木は腐っていましたが、なにも出ず。
シリアゲアリは黒アリもシロアリもやっつけてしまったのでしょうか。
おしまいに
子どもと庭の虫を観察するまでは、黒アリなんて子どもの遊び相手程度の虫なんだと、軽く見ていました。
でも…。
小さな庭にもたくさんの種類のアリが見つかりますし、肉食っけが強くてほかの虫を狙うアリもたくさんいます。私が考えている以上に、ほかの虫たちにも影響を与えているように感じています。
簡単に薬剤をまいて済ませるシロアリ駆除業者ではなくて、庭の実態に合ったシロアリとの上手な共生方法を教えてくれる業者さんがいると助かります。
リンク集:わかりやすい業者さんのサイト
シロアリの生態の説明がわかりやすい業者さんのサイトを見つけましたので、リンクをはります。「シロアリフォーラム」という業者グループがあるようで、シロアリのことを勉強していらっしゃいます。
■シロアリ駆除の専門店 (有)仙北シロアリ|宮城県仙台市を中心に東北一円に対応
■シロアリ駆除・住まいの害虫防除 阪神ターマイトラボ 【兵庫・大阪・京都・奈良 近畿一円対応可能】
■シロアリ駆除の悩み・相談:関東一円に対応「エスケイユニオン」
シロアリ――女王様、その手がありましたか! (岩波科学ライブラリー 〈生きもの〉)
- 作者: 松浦健二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2013/02/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
シロアリはホウ酸でやっつけなさい!―木の住まいを人に優しくコストのかからない長期優良住 (住まいの学校ライブラリー)
- 作者: 荒川民雄
- 出版社/メーカー: 住まいの学校
- 発売日: 2013/04
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る