虫はともだち

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夏休みの自由研究 身近なアリの行動を観察する

 

夏はアリたちが活発に動く季節です。身近なアリたちが何をやっているのか、じっくり観察するのもおもしろいかもしれません。炎天下ではなく、夕方や曇った日の方が元気に動いています。 

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よく見るといろんなアリが…

庭や公園のアリたちが何をしているのか、地面にしゃがみ込んでよく見たことはありますか? 

一般民家の小さな庭でも、いろんな種類のアリが活動しています。

念のために言っておきますが、「アリ」というのは、ハチ目スズメバチ上科アリ科に属する昆虫の総称でハチの仲間です。身近な場所を探すだけでもたくさんの種類が見つかります。

以前「今どきの公園にはアリなんていないよね?」なんて言ってきたお母さんがいましたが、都会の公園にだって普通にいます。

「アリ=砂糖」とは限りません 

「アリは砂糖を食べて暮らしている」と思っている子も少なからずいるようですが、必ずしも甘い物ばかり好んでいるわけではありません。

甘いものもさまざま 

ササヒゲマダラアブラムシが出す甘露に集まるキイロシリアゲアリ。

じっと見ていると、アブラムシを優しく突いてお尻から出る甘露を飲んだり、外敵から守ったりしているのがわかります。

私の個人的な印象ですが、真夏はアブラムシの活動が減るような気がします。夏休みの自由研究のテーマにするには難しいかもしれませんね。

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こちらは、クスノキについたアオバハゴロモの幼虫。白いろう物質に包まれていてちょっとわかりにくいですが、この虫も木から汁を吸って甘いおしっこを出します(味見したことないですが)

アオバハゴロモの幼虫の下にある葉っぱにおしっこが溜り、そこにアリが集まります。

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甘露目当てで、アブラムシを保護して家畜のようにして共生しているものもいます。クチナガアブラムシの仲間を守るクロクサアリ。

木にアリが作った土の道(蟻道)がついていたら、崩してみると見つかるかも。

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アカメガシワの葉にある蜜腺に顔を突っ込んでいるアミメアリ。アカメガシワの幼木を夕方のぞいてみると、蜜の出るポイントにアリが頭を突っ込んでいます。

真夏の昼間には蜜は出ていないので、アリの姿はありません。夕方どうぞ。

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葉っぱの根元にある蜜腺が一番蜜がたくさん出るようですが、葉の周辺に点々とあるようです。ある程度大きくなると蜜腺はなくなるようで、アカメガシワの木の小さいものを探してみてください。

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肉食で残酷な一面も

ユリクビナガハムシ(甲虫)のイモムシを襲うハリブトシリアゲアリ。自分より大きい虫も、集団でやっつけてしまいます。庭の植物にとっては益虫ですが、観察する私に対してもチクチクと攻撃してきます。

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セミの死骸に土をかけて隠してから、小分けして運ぶトビイロシワアリ。土をかけている暇があったら、さっさと分解すればいいのに…?

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自由研究の題材にするなら、死んだセミやミミズを地面に放置して、どの種類のアリが、どのような方法で運び去るのかを観察するのもおもしろいと思います。アリによって運び方も違うので。

 

↓ アリが何を運んでくるのかを、巣の横に座って観察した結果です。

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巣の形もさまざま 

クロヤマアリのように開けた地面に巣穴を掘る種類もいますが、ちょっと探せば見つかるような隠れたアリの巣もいろいろあります。

ブロックや大きなものの下の巣 

庭のブロックや大きな容器をそっと持ち上げてみると、下にアリの巣があることも。

 

敷石の下に巣を作っていたクロヤマアリ。アリに共生するアリもいるようで、この巣穴にはほかの種類のアリも同居していました。

敷石は、そっと短時間持ち上げるだけにしておかないと、アリたちは別の場所に逃げてしまうので注意。神経質な種類のアリだと、一度持ち上げただけで巣を放棄してしまいます。

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朽ちた木の中の巣 

雑木林に落ちている朽ちた木や立ち枯れの木の中にも、よくアリの巣があります。

 

朽ちた立ち木を割ってみたらアミメアリの大きな巣が。アミメアリは巣を作らずよく引越すると読んだことがありますが、こんなしっかりした巣も作るようですね。

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蟻道の中の巣 

雑木林の木に土で作った蟻道がついていたら、その中にアリたちが暮らしています。

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上の木の蟻道を崩してみたら、ハヤシケアリがクチナガオオアブラムシを飼育していました。アブラムシの世話をして、代わりに蜜をもらうようです。これは、急に蟻道が壊されて、アリたちが一斉にアブラムシを引っ張って幹の奥に隠そうとしているところ。

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アリの行列 

アリが大行列を作って何かを運んでいることを見たことはありませんか? 行列を作るのもいろんな理由があるようです。

アミメアリの引越 

引越が好きなアミメアリ。梅雨時などに幼虫やアリを抱えたアミメアリの大行列をよく見かけます。翌日見に行ってもまだ続いていることもあります。何日かけているのかな?

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サムライアリの奴隷狩り 

 サムライアリはクロヤマアリの巣に入り込んで、幼虫や卵を盗んで自分の巣まで持ち帰り、自分たちの世話をさせます。サムライアリの奴隷狩りは真夏の夕方によく起こるようです。すごいスピードの行列で、かなり迫力があります。 

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結婚飛行の女王アリ 

巣から独立するために、女王アリとオスの羽アリが結婚飛行に飛び立ちます。アリの種類によって時期は違います。夏休み中に飛ぶアリもいるので、夜街灯の周りを探してみては?(羽アリは光に集まりやすいので)

女王アリを見つけたら、家に持ち帰って飼育してみると、産卵したり働きアリが生まれたりするところを観察できます。

 

トビイロケアリが結婚飛行の準備をしているところ。このアリは夜に飛び立つのか、夜門灯に集まっていて、少し後に見に行ったらもう羽アリはいなくなっていました。

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アリみたいなクモもいる

アリかと思ってみていると、クモの場合もあります。

アリグモの仲間は、一見アリにそっくりです。アリグモはアリと違って単独でいることが多く、脚はクモなので8本あります。オスとメスで形が違うし、成体と幼体(大人と子ども)で色も形も違います。

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おしまいに  

身近なアリのよく見かける行動を挙げてみました。

「なんという種類のアリか?」

「何をしているところなのか?」

「喧嘩なのか、共同作業なのか?」

調べ始めると、夏休みの短い期間ではとても手に負えない課題です。今年の夏に手をつけて、長期戦で観察していくと、いろんなことが見えてきそうです。

 

アリは小さいので、肉眼で識別するのも難しいです。

ただ、「小さくて見づらい」というのは、大人の認識で、子どもたちを見ていると、こんなに小さなアリたちでも、肉眼でかなり細かいところまで見分けられるようです。若いってうらやましい。

私は老眼もひどくなって細かいものは肉眼では全然わからないので、コンデジに頼っています。オリンパスのTG-4の顕微鏡モードで撮ると、アリの複眼もわかります。

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アリの自由研究というと、よく見かけるのがアリの巣キットで巣穴を掘らせたり、砂糖を使った実験です。

自然界からアリを切り離して実験をしてみる前に、実際に生活しているアリたちの様子を知ることから始めると、意外なことが多いのに気がつくかもしれません。  

 

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