ヒアリを恐れて在来アリも殺虫剤で殺してしまわないで
最近毎日のようにテレビでヒアリの話をやっています。
確かにヒアリは危険生物だと思いますが、危険度ばかりあおって、ちょっと違う方向に走っている番組も目につきます。
ヒアリが怖いからといって庭のアリを敵視して全滅させるのは、逆にかなり危険なことです。在来アリがいることで、ヒアリや不快害虫が制限できると思うのです。
普通の人は「アリ」はどれも同じに見えるから、ヒアリを避けるためにアリっぽいものは全部消し去りたい気持ちはわかりますが。
↑ モッコウバラの花外蜜腺に来たハリブトシリアゲアリ(在来種)。
アリを全滅させようという考え
すべてのアリを悪者にする番組
昨日ちらっとみた番組でも、庭にアリを見つけて「キャー」と主婦に驚かせ、レポーターも恐怖をあおる進行でした。木を歩いているアリ、植木鉢の下に隠れていたアリに、いちいち驚いていました。
よほど都心のコンクリートジャングルでもなければ、アリなんてどこにでもいるのが普通だし、アリがいるからほかの不快害虫の数が制限されていたり、虫の死骸がきれいに掃除されたりしているわけで、感謝こそすれ、全滅させようというのはアリに失礼ではないかと思います。
どうやって全滅させるのか番組を見ていたら、ヒノキ成分の忌避剤をまくことで寄せつけないようにしようと提案していました。殺虫剤を使うよりは安全そうですが、忌避剤の効果はどのぐらい続くのでしょうか。
アリや不快害虫の忌避ということなら、木酢液を薄めて使う方が値段も安くてお勧めかもしれません。
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アリの巣退治剤も全滅を勧めている
殺虫剤嫌いな私ですが、室内のアリの行列に対しては、気の毒ですが毎回ベイト剤を使っています。アリが毒餌を巣に持ち帰り、巣ごとやっつける殺虫剤です。雑巾で水拭きしても、木酢液を薄めたもので拭いても、一度臭い(フェロモン)がついてしまったアリの道はなかなか消えなくてまた来るので。(個人意見)
今年もわが家の室内にアリの行列ができたので、アリの巣を退治するベイト剤を買ってきました。 こういう感じの商品。
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以前はアリの巣コロリを使っていましたが、薬剤が粒状なのでパラパラと散らかるし、壁に縦に貼り付けるとこぼれ落ちてしまうので、最近はコンバットの方を使っています。
で、今さらですが説明書をきちんと読んでみて、驚きました。
ドラッグストアに売っていたどの商品も、一度にたくさんのベイト剤を設置して、一挙にすべてのアリを全滅させることを勧めていました。
コンバットの製品も、箱に入っている6個の薬剤全部を同時に置くと高い効果が得られると書いてあります。
後にも書きますが、ベイト剤の使用はアリの歩く道をしっかりと見極めて置けば「1個で十分」だと思います。巣を全滅させる必要ありません。室内に入ってこなければいいいだけ。たくさん置くのは効果を見てから考えては?
庭にアリがいるメリット
アリの種類にもよりますが、かなりのアリは甘いものだけではなく肉食系のエサに集まります。
虫の死骸にアリが群がっているのはよく見かけますが、その後は跡形もなくきれいになっています。死骸の掃除だけではなく、小さいイモムシやヤスデ、ほかのアリなどのを攻撃してやっつけているのも見かけます。
▼ モッコウバラの新芽にある花外蜜腺にアリが集まることで、葉を食害するチュウレンジバチの幼虫の勢いが止まる例。蜜を飲んで、幼虫も攻撃。アリにとっては蛋白源と甘いものが両方取れるお得な場所になっています。
国際社会性昆虫学会日本地区会(JIUSSI)のサイトでも、「現時点ではアリ駆除は逆効果」であり「在来のアリはヒアリと戦う友です。」と説明されています。ベイト剤に頼りすぎる危険性についても書かれています。
また、最初の段階でベイト剤を置く範囲を広すぎに設定してしまうと、その後繰り返される薬剤投与による環境負荷もまた大きなものになるでしょう。使用予定のフィプロニル剤は残留性が高く、近年水田でアカトンボ激減を引き起こした原因であると指摘されています(文献17)。毒は適量を適切に使うべきです。
↓ 毎度同じようなことばかり書いていますが…(^^;)
アリ・ヒステリーが広がりませんように
生活感のない若いお嬢さんがアリを不必要に怖がるのは仕方のないことなのかもしれませんが、テレビのコメンテーターまで一緒になってヒアリだけではなくアリ全てに対する恐怖をあおるのはどうかと思います。
うちのご近所の人たちがこぞってアリの殺虫剤をまき始めたら怖いです。子どもたちが大きくなったせいか、近年除草剤を多用する人が増えているので…。
今の状況では「今までよりはちょっとアリに気をつけて、怪しければ捕まえて、しかるべきところに問い合わせる」という程度でいいのでは?
ちなみに、アリを捕まえるのって、意外に難しいです。
個人の方がやっていらっしゃるようですが、怪しいアリの問い合わせができるツイッター。ご苦労さまです。
それにしても、「ヒアリに気をつけましょう」と言われても、どれがヒアリなのかわからなさすぎますね。だからみんなヒステリックになってしまうんだとは思います。
私も庭のアリぐらいしか知らないので、実際に遭遇したらヒアリだとわかるか自信がありません。だいたいアリを見つけようと思ったら、老眼を振り絞ってぐーっと集中しないとだめですし、四六時中気をつけているなんて無理(^^;)
室内に入るアリ
そうはいっても、家にアリが大挙して入ってくるのは、ヒアリでなくても困ります。
家に入ってきやすい性質のアリと全然入ってこないアリがあって、一般的には、イエヒメアリ、ヒメアリ、トビイロケアリなどが家に入りやすいと言われているようです。
わが家では、トビイロケアリとルリアリには何度も侵入されました。
イエヒメアリは生息域が私のテリトリーじゃないので見たことがないですが、ヒメアリは屋外でか見たことがありません。
▼ ヒメアリは雑木林の葉上で虫の死骸に集まっているのを見かけますが…。
トビイロケアリ
トビイロケアリは庭にある大きな木(2階以上の高さになるような)の中に巣を作っていて、夏になると室内のお菓子のゴミに行列ができるのが困りものでした。
2年に1回くらいは入ってきた記憶があります。「記憶」というのは、このアリが別のアリ(ハリブトシリアゲアリ)に駆逐されたから。今は庭でこのアリを見かることはありません。
トビイロケアリはどうも巣の規模が大きくてアリの数が相当多いようで、アリの巣コロリ1つでは効かなくて、液体の殺虫剤をまいた年もありました。
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このアリの怖いところは、木材に巣を作ること。家の柱に巣を作られると、シロアリ被害と同じようなことになるので、心配でした。(どこにでもいる普通種です)
▼ 6月、雑木林の木にできた巣にいたトビイロケアリ。私が樹皮を剥がしたので、幼虫や繭を抱えて逃げようとしているところ。
ルリアリ
わが家の室内に来るルリアリは、お菓子のゴミや砂糖ケースに集まってくるのですが、どこに巣があるのか、いまだにしっかりとは把握できていません(^^;)
このアリは、電化製品や箱に入れたティッシュペーパーの隙間にも入り込むそうです。一度、子どもの布団カバーに穴を開けて布団に入り込む行列を見つけたことがあります。神出鬼没で、わが家ではトビイロケアリよりも困ったアリです。
▼ 10月末、台所の砂糖ケースに大量に入り込んでいたルリアリ。寒くなると屋内に入りたくなるようです。これ以来、わが家は砂糖ケースは冷蔵庫に入れることにしました。
おしまいに
夏から秋にかけてスズメバチが悪者のようにテレビで取り上げられて、駆除業者の活躍ぶりが流れます。今年の夏は、スズメバチよりもアリ駆除番組が増えそうです。
たしかに雑木林に行ってアリの巣を暴いたりしていると、普通種のアリでも手をひどくかまれたり、一斉に蟻酸をかけられることもよくあります。かなり刺激があるので、顔を近づけない方がいいですよ。
アリをいじめようとしてやっているのではなくて、クワガタとかタマムシの幼虫を探そうとしてやっていることですが、アリの威力を思い知らされます。
わが家はいろんなものによく刺されるので、ポイズンリムーバーを常備しています。これを買ってから、なぜか一度も刺されていませんが。
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ついでながら、クモも益虫です。